どうしようも無いからとりあえず生きる

ふがいない僕は空を見た」を読み終わりました。
良いことがなくても、誰にも相談できないことを抱えていても、とりあえず生きる。

この小説に登場する人たちはかなりの問題を抱えています。
どれくらいの深刻さかというと、実際のニュースで無理心中や家族間での殺人や失踪など、それの要因となりそうな問題や悩みです。

よくあるドラマや映画で、こういった悩みを抱えている登場人物がいると必ず次のような言葉をかける登場人物もいます。
「生きろ!生きていれば必ず良いことがある!だから生きろ!」
あるいは、「生きていくしかないんだよ!」です。

しかしこの本には、それらのメッセンジャーは登場しません。生きることに対する価値判断に立ち入らず、生きることに義務も発生させません。
生きることに対して熱く語る人間は誰も出てこない。

おそらく登場人物全員が、死ぬや殺すという選択肢を一切持っていないからです。
生きるという大前提を崩さず、それを当然としているからです。

そこに精神の強さを感じました。

多分、私だったら命を絶っているシチュエーションがかなりあります。

読んでいて「もうこれどうしようもなくない?」「救いもないじゃん。誰も手を差しのべないじゃん」と残酷に思いました。

しかし、彼ら彼女らはとりあえず自分に与えられた仕事をする。空腹でぶっ倒れそうでも仕事をしてみる。

この強靭さを痛感して、読み終わった本を置きました。
表紙には「ふがいない僕は空を見た」とあります。
ふがいなさの自覚はまだ頑張れる証拠なのかなと思いました。